第12回 うつ病を理解する(4)《うつ病の本質》《従来のうつ病》
職場で役立つストレスマネジメント(山陰経済新聞) | 2004年11月28日
メディカルストレスケア飯塚クリニック 飯塚 浩
株式会社アイ・エム・エイチ(橋田カウンセリングルーム) 橋田富美恵
■うつ病の本質
筆者はうつ病の人に「自分の親友のように自分に関わる」ことを勧めます。親友というのは相手が立派である必要はありません。自分が今の相手を受け入れ、尊重することができれば、友として付き合うことができます。それを自分に対してできることは、うつ病を根本的に回復させ、予防することにつながります。これは自己の自己に対する関わり方というのが、うつ病にとって本質的な問題であるからです。
所属する集団(家族、学校、会社、社会など)の共同幻想を徹底して優先させてしまい、自分という「個体」を保つためには受け入れるしかない「自己感覚」を軽視してしまう傾向が明らかなのがうつ病者です。
■従来のうつ病
私たち一人一人の「個体」は自分自身の「快・不快」という感覚に基づいて自分の生活環境を選択、調整、構成していきます。そうでなければ「自分」という個体のまとまりを保つことができません。自分の感覚を受け入れにくくするのは、いつの時代でも個人を取り巻く社会の共同幻想です。それはまた時代によって個人に要請するものが違います。
産業革命以降の近代工業化社会においては、製品だけでなく人間にも画一性を要求しました。決められた時間に決められた通りに動くことが人間にも求められました。そのような社会における適応的な生き方とは、真面目かつ几帳面に共同幻想的に「善きこと」をなしていくというものです。
自己感覚の無視を続け、「自分」というまとまりを保ちにくくなってくると、さまざまな失調が身体と精神に生じてきます。交感神経と副交感神経のバランスで動いているさまざまな機能に変調が生じ、種々の自律神経症状が惹起します。また「気分が落ち込み」「楽観的な見通しを全く持てず」「死を考える」といった精神状態に個体が陥るわけです。これがうつ病です。
現代は第二次産業から第三次産業に中心が移っている時代です。それによって現代のうつ病はどのような形で表われているのでしょう。次回は「現代のうつ病」について詳述します。