第11回 うつ病を理解する(3)《軽症で慢性のうつ病が最も見逃されている》《「人格の問題」とみられやすい軽症うつ病》《長期にわたる気分不良は受診を》

 メディカルストレスケア飯塚クリニック  飯塚 浩
 株式会社アイ・エム・エイチ(橋田カウンセリングルーム) 橋田富美恵

 

■軽症で慢性のうつ病が最も見逃されている

 「誰がみてもうつ病らしい」という古典的なタイプのうつ病は、症状は重篤ですがそれだけに治療に結びつきやすく、結果として急速に改善します。むしろ問題なのは、本人も周囲も「病気」とは気付きにくいタイプのうつ病です。気分が明るいときも時にあるが、1日の大半は陰うつな気分が続き、不安や心配、イライラが目立ち、「普通」の生活はできるものの能力が十分発揮されていない状態が持続します。

 

■「人格の問題」とみられやすい軽症うつ病

 実はほんの20年ほど前まではAPA(米国精神医学会)ですら慢性的に軽度の症状が続くタイプのうつ病を「人格の問題」として扱っていたのです。この疾患を有する人の家族や会社の同僚なども、ささいなストレスに過剰反応しているようにしか思えず「そういう性格の人」とみてしまっていました。また本人自身もそんな周囲とのやりとりに苛立つと同時に自信を失っていたのです。それでも本人も含めて誰もが「病気」とは夢にも思っていないわけですから、当然まともな治療は期待できず、同じ状態が続いてしまっていました。
 しかしこのタイプのうつ病の研究は近年急速に進歩しました。「気分変調症」に代表される軽症かつ慢性のうつ病が、生物学的、遺伝学的にいっても重度のうつ病との関連が深いことが最近では証明されています。そして薬物療法や各種精神療法が十分効果的であることもわかってきました。

 

■長期にわたる気分不良は受診を

 うつ病が見逃されやすい病気であることはいくら強調しても足りないほどです。落ち込んだ気分がほとんど毎日あり、気力の低下や疲労感が続いたり、不眠や過眠、食欲不振や過食があったり、自分がとるに足らぬ存在に思えていたり、集中力低下や決断ができにくいなどの症状が長期にわたる場合、いくら仕事に支障なく行けているとしても一度専門医を受診してみるべきでしょう。
 また企業の社内教育も重要です。軽症うつ病に対し早めの対処ができるようになれば、社員と企業双方に大きなメリットをもたらすでしょう。