第3回 《EAPの背景としての米国型社会》《経営トップに必要な意識》
職場で役立つストレスマネジメント(山陰経済新聞) | 2004年2月28日
メディカルストレスケア飯塚クリニック 飯塚 浩
株式会社アイ・エム・エイチ(橋田カウンセリングルーム) 橋田富美恵
■EAPの背景としての米国型社会
まるで能力のある人間だけが他者に受け入れられるような雰囲気の「勝った者勝ち」の社会では、常に「脱落の不安」がつきまといます。そして上手に休むことが困難になり、バランスを欠いた状態に陥りやすくなります。
休日になると何か落ち着かず、結局会社に出かけてしまう。何もせずにボーとしていることができず、アルコールやパチンコなどを使わないと仕事(とそのベースにある不安や焦り)から離れることができない人が多くなります。当然ストレスの増加に伴ってますますそれらの「必要性」も増していくため、仕事や飲酒やギャンブルなどへの依存、健康問題や借金問題などを抱える人々が必然的に溢れます。日本が近年傾斜を強める米国型社会とはこのような社会です。
その成立の歴史からして「パワーが全て」であった米国では、当然のことながらアルコールや薬物問題が1940年代から大きな社会問題でした。企業はそれらの問題で次々と有能な社員を失いました。そのことが企業に与える損失があまりにも莫大であったため、それに対処し得る手法が官民あげて工夫されていったのです。現在、フォーチュン500大企業の95%が導入しているEAP(社員支援プログラム)とはこのような背景をもっています。
■経営トップに必要な意識
社員の業務パフォーマンスを低下させるアルコールや薬物、ギャンブルなどへの依存やうつ病などへいかに対処していくか。企業業績を維持するためにシステム上何が必要なのかについて、現在一応の結論は得られています。それは「弱みや問題を隠そうとする人や組織ほど不安定である」という認識です。すなわち自分の問題をオープンにして対策を講じられるような人や組織は安定性が高く、信頼できるというものです。弱みや問題を隠そうとすればするほどシステムが硬直化し、バランスがとれないまま時が過ぎ、結果として深刻な事態を招くという原則は個人にも組織にも当てはまることなのです。
次回はEAPの扇の要である管理職研修の要点についてお話します。