第2回 《業務効率とストレス》《Winner-take-all型社会と企業》
職場で役立つストレスマネジメント(山陰経済新聞) | 2004年1月28日
メディカルストレスケア飯塚クリニック 飯塚 浩
株式会社アイ・エム・エイチ(橋田カウンセリングルーム) 橋田富美恵
■ 業務効率とストレス
前回はストレス・マネジメントの必要性についてお話しました。華奢な少女が超重量物を持ち上げるような「火事場の馬鹿力」が一時的なものであることを疑う人はいないでしょう。それほどのレベルの緊張度ではなくとも、ストレッサーに対してアクティブに反応している身体状態を常に続けることはできません。しかしそれを「本来の力」ととらえ、そのレベルの緊張度が当たり前でそれ以下の緊張度をまるで「怠け」のように考えてしまう(あるいは周囲に考えられてしまう)ことは起こりがちです。バランスをとるために必要なゆとりが失われ、能力を十分に発揮できない状態が続いてしまいます。このような状態はよほど程度がひどくなれば本人や家族らが医療機関などに相談するでしょう。しかし多くの場合放置され、業務パフォーマンスが落ちた状態が持続します。そして会社側と社員双方の不満と不快が蓄積されていくのです。
このような状態にある社員が医学的にみてうつ病などの「病気」であるかどうかはともかく(長引けばいずれ種々の心身疾患につながるでしょうが)、とにかく企業にとって大きな損失であることは間違いありません。このような職場におけるストレス・マネジメントを形にしたものがEAP(社員支援プログラム)であるといえます。
■Winner-take-all型社会と企業
少数者による富や権力の独占を奨励するかのごときWinner-take-all型社会への傾斜が近年顕著になり、人々のパワー信仰と緊張に拍車がかかっています。そしてパワー信仰のメッカ米国の後追いをするように日本でもアルコール問題や種々のストレス関連疾患、働き盛りの自殺者の激増などが社会問題化しています。
米国企業では早くから社員のアルコール問題や種々の心身疾患による長期休業や退職などに悩んできました。業務効率の低下や再雇用や社員教育にかかるコストは膨大なものでした。その結果、社員間の人間関係や家族問題、そして職場システムなど業務効率の低下を招くさまざまな要因を取り除くノウハウが蓄積されてきたのです。次回は具体例をご紹介します。