第1回 《ストレスとは何か》《ストレス・マネジメントの必要性》

 メディカルストレスケア飯塚クリニック  飯塚 浩
 株式会社アイ・エム・エイチ(橋田カウンセリングルーム) 橋田富美恵

 

■ストレスとは何か

 ストレスはさまざまな原因によって引き起こされます。ストレス反応とはさまざまな環境の変化に際して生物に生じる心身の緊張であり、生体の維持に欠かせないものです。しかしこの状態は、生体が環境の変化に適応し、次の安定状態に移行するまでの「つなぎ」の身体状態です。
 このようなストレスというものを実利的な側面からみるとプラス面とマイナス面があります。プラス面としてはやる気や集中力が増し、能力が発揮しやすくなり、物事の達成が容易になります。このような成功体験が動機づけとしてあるため、私たちは常に自分を頑張らせようとしているのです。しかしあくまで「つなぎ」であることを忘れてはなりません。身体に相当の負担をかけるこの状態を「当然」のように考え、際限なくひっぱり続けてしまえば、何らかの問題は避けられません。

 

■ ストレス・マネジメントの必要性

 ストレス状態が持続し、慢性的な緊張や疲労を抱えながらさらに頑張り続けると、ある時点からストレスのマイナス面ばかりが目立つようになります。仕事が進まないばかりでなく、友人と会うのも億劫になり、テレビなども楽しめなくなります。イライラしやすく攻撃的になったりすることもあります。放置すれば、胃潰瘍、高血圧、糖尿病の悪化、頭痛、めまい等、さまざまな身体疾患やうつ病などの心身疾患が生じてきます。
 近年の不況を背景にただただ体育会系的に部下を叱咤激励し、部下の方は慢性緊張・疲労に陥って何も進まず、それをみた上司がさらに叱咤のボルテージをあげる・・・という悪循環があちらこちらでみられます。しかし部下や組織をほどよいテンションとペースで(すなわち最良の効率で)運営できる人事能力を全ての管理職に求めるのは非常に困難です。しかしこれを放置しては社員のパフォーマンス低下と業績低迷は避けられません。
 その対策として、欧米のほとんどの主要企業が導入しているのがEAP(従業員支援プログラム)です。これについては次回お話しましょう。