第10回 うつ病を理解する(2)《社員のうつ病対策は不可欠》《うつ病の誤解は専門職にも》

 メディカルストレスケア飯塚クリニック  飯塚 浩
 株式会社アイ・エム・エイチ(橋田カウンセリングルーム) 橋田富美恵

 

■ 社員のうつ病対策は不可欠

 メンタルヘルス上の問題がすでに多くの業種で長期欠勤理由の第1位か2位となっています。その大部分を占めているのがうつ病であり、世界保健機関WHOの資料でも2020年には労務が続けられない理由の第1位になるであろうと予測されています。企業にとって「うつ病」は社員の健康管理上の最重要事項であるといえるでしょう。
 大抵の身体の病気であれば、年1回の健診などで容易に発見でき、その状態を本人や他者が正しく認識することはそう難しいことではありません。しかしうつ病は肝機能の数値や心電図ほど「わかりやすい」ものではなく、外見は誰もが経験するようなストレスによる一時的な落ち込みやイライラのようにみえるため、周囲だけでなく本人すらも「性格上の問題」「単なる疲れ」「更年期障害」などと誤解している場合も多くあります。

 

■うつ病の誤解は専門職にも

 その誤解は医師や心理カウンセラーなどの専門職においても例外ではありません。高度の不眠や体重減少、自殺を考えるといった重症のうつ病ならば、さすがに見逃されることはまずないでしょう。しかし一般の内科や心理カウンセラーのもとに訪れる場合は軽度から中等度の状態がほとんどです。そのようなケースでは頭痛やめまい、倦怠感、不眠などの身体症状の他、慢性的な不安、いらいら、怒りっぽさ、人間関係の不和などが主な症状として語られます。したがって鎮痛剤や睡眠薬、抗不安薬のみで対応されたり、更年期障害として婦人科でホルモン療法のみ行われ、症状がくすぶりつづけている場合も多々あります。たとえ抗うつ薬が処方されていても、用量や薬剤選択の不適切さから効果不十分な場合もみられます。
 心理士にカウンセリングを受けている場合でも同様なことが生じます。夫婦関係や職場の人間関係の問題などの問題が目立っていたり、苦痛な問題が頭から離れず前向きに考えられないといった形で表れているうつ病の徴候が誤って心理的な問題と判断され、精神療法的な対応のみが長期間行われていることもあるのです。