第7回 《「やろうと思うことができない」のはなぜか》《「意識」の暴走が組織に与える影響》

 メディカルストレスケア飯塚クリニック  飯塚 浩
 株式会社アイ・エム・エイチ(橋田カウンセリングルーム) 橋田富美恵

 

■ 「やろうと思うことができない」のはなぜか

 「やろうと思うことができない」「やってはいけないと思っていることをやってしまう」ということは、誰もが経験していることでしょう。なぜこんなことが起こるのでしょうか。
 「これができたら安心」「これができなかったらマズイ」と考えるのはこれは<意識>です。<意識>は常に物事を○か×で判断しています。<意識>のままにやろうとしてもできないことが多いのは、人間の行動はそれだけでは決まらないからです。もし<意識>だけで行動が決まるとしたら、それはロボットと大差ありません。
 ロボットでない人間には<無意識>というものが存在します。<無意識>は人間の感情的なこと、現在の疲労の具合、好み、体質、その他もろもろの意識にはのぼらない広大な領域の情報を知っています。その判断は「○か×か」ではなく「楽か苦痛か」というものになります。<無意識>の判断は頭ではなく体で感じるものであり、その判断は刻々と変化します。
 私たち現代人は常に<意識>を優先し、<無意識>に注意を向けません。むしろ向けることを避け、体がいかに拒否反応を示していてもあえて行動を行うことが美徳にすらなっています。しかし<無意識>が苦痛である行動が長続きするはずがありません。「やろうと思うことができない」ということになります。それをあえてやれば暴飲暴食、過剰なギャンブルや喫煙などを誘発したり、言動が刺々しくなったり、うつや不安発作、さまざまな身体疾患を生じることでしょう。

 

■<意識>の暴走が組織に与える影響

 職場や家族というものは一つの「システム」であり、まるで1個の生き物のような動きをすることを前回お話しました。<意識>の暴走が影響するのは個人だけではありません。本人が重要なシステム構成員となっている家族や職場も同様です。不調を訴えて休職する社員が次々と出現するしたり、妻や子どもが繰り返し病む背景にも何らかの強固な<意識>が存在している可能性があるのです。